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アメリカでは、特にアフリカアメリカン系の選手は背筋が日本人と比べかなり発達している。
vol.3
得るものと、失うもの
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二年程前まで、私は食べるという事にまったく興味がなかった。今になって食べる楽しみが解りだしたのだが、昔は私にとって食事とはただ単に腹が鳴るから食べるというくらいの作業の一つでしかなかった。そのため二十歳ぐらいまでの私といえば本当に線が細く、腕などは細い手首の細さがそのまま肩に伸びているような感じで、体の厚みもなくまさしくガリガリそのものだった。
小学生のとき身体測定で身長、体重を量り、その平均をグラフで書く身体測定表のようなものがあった。それで太りすぎ、痩せすぎが確認できるのだが、私は六年を通じて全て痩せすぎのさらに下だった。そのため担任の教師が私を心配して家で食事を食べさせてもらっているのか?と聞かれるほどだった。中学でも父との体格のあまりの違いに本当に親子なのか?と友人に聞かれたこともあった。そうした中で高校のころには自分は一生太らないし、筋肉のつかない体質なのだと決め付けていた。今思えばそれはただただ食べる量が少なかっただけの話だったのだが。 体格が変わり始めたのが五年程前、浪人中だったころの事だ。私は基本的に外で体を動かすのが好きだったが、浪人中でそんな時間はなかった。そこで私は今まで一度もした事のない筋トレをやってみようと思ったのがきっかけだった。一般的に聞いたように最初の一、二ヶ月ではさほどの効果が見られなかったが、少しずつ筋肉がつき始めたのが自分には解った。それは二年程つずいて、そのころにはもう昔ほどの痩せた姿ではなくなっていた。しかしそれでもやっと平均的な体型になっただけの事だった。しかし少しずつ少しずつ続ける中で私は継続の力を初めて身をもって知ったのだった。 しっかりとした筋肉をつけたい。そう考えたのがジムに通うようになってからの事だ。それから私はアレだけ面倒だった食事を自ら食べるようになっていて、体重も十キロ近く増えていた。その後私はアメリカに留学することを決心したとき、筋トレはアメリカへ行くに向けての体作りという考えに変わっていった。 アメリカの選手達は私が想像していた通りの体が大きく、筋骨隆々としていた。日本はバンタムからライトまでの層が厚いのに対し、アメリカではウェルターから上の階級が一番層が厚い。グリーソンズジムにもアメリカでいう中量級、重量級の選手もスーパーライト級世界チャンピオンのビビアン、ハリスやザブ、ジュダ-など数人の元 世界チャンピオンがいて、彼等のスパーをはじめてみたときはそのスピードの速さに驚いたものだった。このように書くとこちらでは大きな選手ばかりのように見えるが、軽量級の選手も自分が思っていた以上にいた。軽量級はメキシカン、プエルトリカン などの南米の選手が多く、数人の世界、元世界チャンピオン達をこのジムは抱えている。他に違いを感じたのが、日本にはフライ級の選手も多いが、アメリカで私はまだ一 度もバンタム以下の選手を見たことがないことだ。 減量。その考え方の違いにも私には大きな驚きであった。まずこちらの選手は日本人ほどの減量をしない。あるトレーナーにどれ位減量をプロはしているのかと聞くと、多くて5〜7キロ位だという返事が返ってきた。中には10キロ以上のきつい減量をしている者もいるだろうが、ほとんどの選手が3〜7キロぐらいの間のようだ。背の低い選手もニューヨークにはかなりいる。しかし日本と違うのは彼等は皆体自体が大きく、階級を下げない事だ。私のトレーナーである、ジョーイも身長は170センチ足らずくらいでジュニア・ウェルターやウェルターでも試合をしたことがあったらしい。今のグリーソンズジムにも彼に似た体型の選手達がいる。アメリカではやはり階級が上がるほど、人気もファイトマネーも高くなるため、自然と人間が集中するようだ。選 手によってはアマチュアから増量してプロになるものまでいるくらいだ。 私はボクシングのストイックな部分に惹かれたため、苦しい減量を耐え、体を絞り込みリングへと上がる日本人の姿が好きだったし、誇らしかった。パワーやスピードで欧米人に劣る日本人は、階級を下げる事により、体格の優位性、減量に耐えたことで得た精神力などで対抗してきた。しかし苦しい減量の中で練習中にどれだけ自分の力が出し切れるのか?試合当日にどれほど回復されるのか?アメリカで試合が近づく中、元気に練習をしているプロの選手を見たとき私は考えていた。減量をする上で得るものと、失うもの。私は今まで失うものの大きさをこの地へ来るまで知らなかった。減量とはどのようなものなのか?私はまだわかっていない。
(文と写真:中屋 一生)
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