彼等が今のルームメイトのアレックスとマキさん。         


vol.7
帰す場所は(後編)
 一つの家に六人というのはやはり多い方ではあるのだが、ケビン以外のことではトラブルはまったくなく、ニューヨークに慣れるまでにはとてもよい環境だったと思う。しかしケビンには困ったものだった。彼は私に金を借りにきたときがあったののだが、私は金については一切の関係を持ちたくないと断ったのだが、やはり彼は他のルームメイト達からも何度か借りていて、それもまだ返していなかったらしい。このような人間と住むととても疲れるのがよくわかった。

 クイーンズに住んでから一ヵ月半後、私達は皆契約が切れるためここを出なければならなかった。そのため私はまたアパートを探し始めたのだが、今回は以前と比べすぐに新しいアパートが見つかった。場所はブルックリンのユティカというサブウェイから8分ほど歩いたところで、アフリカンアメリカンばかりが住んでいる地域だった。

 部屋を見に行ったときに迎えに来てくれたのが、韓国人の女の人のマキさんだった。本名ではないが皆にそう呼ばれているらしい。彼女は日本の京都で2年ほど留学をしていたため、日本語が喋る事が出来た。最初、訛りなのかと思っていたのだが、あまりに普通に喋れるためまったく気が付かなかった。彼女の彼氏で一緒に住んでいるのが、アフリカンアメリカンのアレックスという俳優を目指している男だった。私は周囲の安全性について問い掛けると、大きな道なら警察も見回りをしているし安全だが小道に入ると危険だといわれた。

 そう、ニューヨークでは部屋の広さや使い勝手のよさよりも、その地域の安全性が何より大切で、家賃の高さもそれに比重してあがっていく。その地域の安全性を見極めるにはまず、 自分が住もうと考えている場所の周りの車を見ることだ。当然、破損のある車が多い場所ほど危険である。ここまで破損した車はなかったのだが、やはり小道は見てみて危険な予感がした。

 二人とも外国人ではあったが、私と非常にうまが合った。マキサンの場合、日本語が苦もなく話せるので、もはや外国人という気がしなかった。彼女は日本食のレストランで働いていて、帰りがいつもかなり遅い。アレックスは夏にヤンキ―スタジアムでビールなどを売っていて、冬は冬眠中らしい。彼は本当に変わり者だ。服装も他のアフリカンアメリカンとはまったく違うし、変な趣味もたくさん持っている。そして彼は日本人が好きで、彼も京都に一ヶ月近くいた事があるという。彼はニューヨークよりも日本の方が好きらしい。テレビやゲームも好きでまるで子供のようだが、根は思いやりのあるいい奴である。

 ある日私が家にレンジとトースターを買おうと思うというと、彼等はそれなら3人で買おうといい、料金を一緒に出してくれたり、パソコンも自分達もほしかったといい、またも一緒に買うこととなった。テレビのケーブルなども付けてくれたり、つい最近ではある夜、私が暑さでうなされているのをアレックスが聞いたらしく、次の日、彼等は自分達の部屋に置いていたエアコンを私の部屋につけてくれた。私の帰りが遅いと彼はずっと私の心配をしていたり、彼女は時々作る料理を私にも分けてくれた。私達はもはやルームメイトというよりも家族のような関係になっている。

 安心をして一緒に生活ができる人間を見つけるのは、多分とても難しいのだろう。しかし私は幸運により、恵まれたルームメイト達と今過ごしている。安心して帰れるところがあるというだけで人は幸せなのかもしれない。

 

               (文と写真:中屋 一生)



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