![]() ジムの近くのブルックリンブリッジ。 vol.8
三つの道 |
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私の前に三つの道が見えている。一つは平坦でぼんやりとした道。もう一つは、心地のよい身を任せるだけでも体が進む、なだらかに下る道。そして一つは、進むためには少しの強い意志を必要とする壁のある坂の道。一つはうっすらと先が見え、一つは前のみが光を照らし、一つは何かが邪魔をして先はまだ見えてこない。
この地に着いたとき、私の前には先の見えない坂の道しかなかった。他の道を日本に捨ててきたためだ。様々な事が進むたびにおき、少しの挫折や自信を私に与えていった。このころの私をささえていたものは挑戦する事の楽しさと苦しさを感じることだった。 今、私はいつのまにか自分が平坦な道を歩んでいる事に気が付いた。一日一日を過ごしていくごとに、私の意思が慣れへと支配されていた。慣れてしまうことの恐ろしさ、以前出来なかった事や難しかった事が、今は容易に何の考えもなく出来ている事がある。それは喜ぶべき事なのだが、私はそれらに対して以前、挑戦するという意志で向かっていたのだ。しかし、いつしかそれは私にとって当たり前のことになってしまい、私の心の中から挑戦の文字が薄れ、慣れという文字が色濃く染み付いていた。やらなければならない最低限の事はやっている。しかしそれを超える意思と努力が今の私には欠けている。ここでいままで突き動かしていたものは何だったのか?それを考えていたとき、私は二つの道をいつしかまた創っていたことに気が付いた。 日本にいたころ私は、常にこの二つの道のどちらかを歩いていた。この道を私は逃げ道と考え、私はこの道を歩む他の人や何より自分に対して、大きな失望感を持っていた。そして私はアメリカに来るという形で、この二つの道を自ら絶った。逃げ道をなくす事で、自分を進ませるほかになっかたからだ。しかし、私は慣れからまたもこの道を創ってしまっていた。もう一度、あのときのように上を見上げなければならない。そして私には今、苦い経験とそれに立ち向かう勇気が必要なのだろう。そう少しずつでいいから。ここ最近そんな事を考えていた。
(文と写真:中屋 一生)
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