![]() vol.9
明かりが消えた日 前編 |
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練習を終えストレッジをしていたとき、突然ジムの明かりが全て消えた。最初ブレーカーが落ちただけだと思い、気にせずシャワーを浴び、外に出てみるとどうやら何かがあったようだった。近くのビルからは人がたくさん外に出ていて、ざわざわとしていた。ブルックリンブリッジを見てみると、ものすごい数の人が橋を渡っていた。駅まで歩いている間に周りの話に耳を立ててみると、原因は大規模な停電である事がわかった。サブウェイも止まってしまい、信号も止まってしまっていた。そのため道は人と来るまで溢れ、交通麻痺を起こしていた。私は、学校がジムからそんなに離れていないので、とりあえず歩いて学校まで行く事にした。
大道りでは警官が信号の代わりとして車を誘導していたが、車は溜まる一方でまったく進んでいなかった。バスの中は人が溢れ、外を歩く人々をただじっと見下ろしていた。道の端に座り、テロと勘違いしていたおばあさんを、娘らしき人が説明をしている姿も見た。私も周りの人が笑っていなければ、同じように勘違いをしていただろう。どうにか学校には着いたのだがやはり閉まっていて、帰るようにメインオフィスで言われただけだった。ベンチに座り30分程休み、どうするかを考えた。近くのサブウェイに行きバスマップをもらい、自分のアパート周辺までのバスがあるのが分かったので、バス停を探す事にした。 私は近くにいた警官に自分の探しているバス停を聞いたが、「分からない、他の奴に聞いてくれ。」と言われた。その他の警官も皆言う事がバラバラで、まるで当てにはならなっかった。(ニューヨークのとくにマンハッタンの警官は道を知らないものが多いうえ、平気でうその道を教えたり、そんな建物はないなどという。ここにきた当初は、結構知らずに道を聞いて大変だった。)自分で見つけたバス停にはすでに人だかりが出来ていて、バスには乗れそうにもなっかた。結局は歩いて帰るほか手段はなかった。 私がいた場所はブルックリンのダウンタウンだったので、最初はものすごい数の人がデモのように一緒になって歩いていた。中には疲れていた者もいたが、多くはなにやら楽しげに歩いていた。進むにつれ人は少しずつ減り、道も車がスムーズに走るようになっていた。段々とアパートが多くなり、日が暮れれば独りでは歩けそうもない、アフリカアメリカンばかりの住む地域に入っていった。 路上ではアパートから全ての人が出てきたかのように人で溢れ、子供は走り回り、おばさんやおじさんは椅子に座り雑談をし、バーベキューをしていた。はっきり言っていつもと殆ど変わりなく、車さえもともと信号などを守らない者が多いので、ついていないことを忘れてしまうくらい自然だった。歩き疲れが見え始めたころ、ようやく自分の知っている地域までたどり着いた。 ジムを出てから4時間はゆうに越えていた。やはりこのあたりもこの辺りも特に困った様子は無く、むしろこの状況を思いっきり楽しんでいた。アパートに着くと中は暗闇に包まれ階段さえなかなか見えず、ここでも普段明かりを使っているのだと感じた。自分の部屋の前まで着くと、ルームメイトが部屋の中でだるそうにしているのを見つけた。どうやら二人とも、家を出る前に停電になったらしい。私は冷蔵庫に入っていたまだ冷たいレモンティーを一気に飲み干し、この状況をルームメイトに詳しく聞いた。ニューヨーク以外でも、ニュージャージーや他の州そしてカナダでも被害に及んでいたらしい。昔にもあったらしいのだが、今回が全米史上最大の大停電だったらしい。 暗闇の中、ルームメイトが持っていたロウソクに火をともし、人間の生活の中に現在どれだけ電気に頼っているのかを何かをするごとに感じていた。ロウソクの火のゆらめきを眺めていると、疲れと蒸し暑さから自分もロウソクの蝋のように溶けていってしまうような感覚に襲われた。ロウソクに息を吹きかけ、私は泥のようにベットへ体を深く深く沈ませた。
(文と写真:中屋 一生)
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