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「伊礼杯」に寄せて
26日水曜日 京王プラザホテル八王子にて、 第23回ファイティングスピリットシリーズが開催された。 伊礼善洋 無敗にして8戦目で、 第48代全日本新人王獲得。 次戦。 地元八王子で迎えた6回戦終了後、 意識喪失。 16日に及ぶ闘病の後、 彼はこの世に別れを告げた。 実直なファイター。 弾幕の雨霰を被弾しながらなお、 歩を進めるその姿は、 見る者全てに、勇気と感動を刻み込んだ。 伊礼よ。 四年後、 君を見、ボクシングを歩んだ若き天才が今日、 君の志をついで、君の先に続く道に、 歩を進めたよ。 君が敬愛する中屋廣隆会長に、 君が全日本新人王の称号を獲得しプレゼントして以来、実に四年。 その間、君に続けと、挑み続けてきた多くの中屋ファイターたちを 拒み続けてきた、全日本新人王。 それを、 荒川仁人が、 過酷なトーナメントロードを抜け、 見事フラッグシップを獲得し、会長に報告した。 会長が、君を模して創作したブロンズ像「伊礼杯」 その姿は、 君が、激戦の決勝を制した後、天に向かって両の拳を突き上げた、 あの姿そのものだ。 伊礼よ。 仁人も、また、君に劣らず、見事だった。 義理を欠かず、仕事を終え、わずかばかりのジムワークをし、 福生まで、走って帰る。 両の拳を痛め、スパーリングもできず、バックも打てないまま 向かえた決勝を、君ゆずりの 「ファイティングスピリッツ」 で制した仁人。 激戦を経て、仁人もまた、見事に研磨され、 新たなまばゆい光を解き放った。 スポンサーを受け入れ、 拳を治し、 練習に専念し。 日本ランク10位 地元でのお披露目興行 6回戦 すべては、君のときと、同じ条件だ。 そして、仁人は、 その舞台で、 相手ばかりか、 見るものをも、圧倒した。 研ぎ澄まされた、眼力と反射。 被弾せず、残像のように走る拳と、 はじける重い打撃音。 3ラウンド、 ランクインをもくろみ、 質の高いトレーニングと、 断固たる決意を持って望んだ相手の意識を、 磨かれたELEGANTな連打で、刈り取り、 カウント無きレフェリーストップに追い込んだ。 10戦10勝6KO 柔和で、心やさしい、 おだやかな、若き天才が今日、 君の志を継いで、 さらなる高みに歩を進める。 そして伊礼よ。 もう一人は、なんと君の同期だ。 そう、 君と共にあの、新人王トーナメントを駆け上がり、 東日本新人王決勝で破れ、 君においていかれた、 あの、村上潤二だ。 あれから彼には、 二度の骨折と、オペ、闘病という、 苦難の二年が、待っていた。 線の細い才人は、しかし、 不遇から逃げず、 己に負けずに歩を進め、 自分の欠点を修正し、 長所に磨きをかけ、 たくましく成長し、 今日見事ここに、 結実した。 相手は東洋太平洋4位李。 あの潤二が、 実に9ラウンドに及ぶ打撃戦を展開し、 最後は連打で相手の気力をねじ伏せ、 見事KOで勝利を収めた。 そして、君が敬愛してやまなかった 八王子中屋の大番頭、 小暮飛鴻。 健在だよ。 君と同じ、 ファイタースタイルの小暮は、 高いポテンシャルを示す相手を見事攻略し、 8月、再び日本の頂点に、 チャレンジする。 安心してくれ。 そして、 誉めてやってくれ。 君の志は、 立派に中屋ファイターたちの血肉の中に、 脈々と生きている。 中屋会長に持たせてもらった、 君のブロンズ像は、 ずしりと重かった。 最後に、 あの月花正幸 今は、慈恵会医科大学の学生だ。 志望は脳外科。 この傑出した才能を誇る原石も、 君と同じくプロの舞台に立ち、 今や比類ない輝きを、 放ちつつある。 今年は、月花がやる。 間違いなく、全日本新人王を取り、 第二回伊礼杯をその手中に収めるだろう。 さあ、 君が夢みた世界のベルトは、 君の志が生きるこの内の誰か、 もしくは全員が、 獲得し、君に報告することになる。 伊礼よ。 ありがとう。 見ててくれ。 文:渡辺 聡
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